ぶらり歩き

15. 柴又七福神巡り                                     平成21年2月7日

 大学時代の友人4名と京成高砂駅で待ち合わせて、柴又七福神めぐりを計画する。今年初めてのウォーキング。予報された気温よりも少し低めではあるが、雨の心配はなく、まずまずのウォーキング日和である。
 まず、京成線に沿って東京側に戻ったところに建つ、寿老人を祀る観蔵寺(かんぞうじ)を訪ねる。室町時代の文明元年(1469年)に創建された古い寺である。車がすれ違うことは難しい、駅から寺までの狭い道の途中にある民家の入口に、お神輿が展示されている。個人でお神輿を所有することは考えにくいので、町内のものを預かっているのかと勝手に推測する。
 再び、駅前に戻り、江戸時代中期から成田山参りの旅人で賑わったという旧佐倉街道を歩いて行くと、電柱に江戸川が氾濫したときに想定される浸水レベルを表示したプレート(写真1)が張り出してあるのを目にする。東京は地震災害も心配であるが、江戸川に近いこの地域では洪水による被害の方がより現実的な脅威となっているのであろう。しかし、このような情報の表示は被害の低減に効果があると思うが、地価に対してマイナスの影響も考えられ、行政と住民の英断に拍手を送りたい。

 旧佐倉街道を離れて新柴又駅の近くの恵比須天を祀る医王寺を訪ねる。応永14年(1407年)に、赤目病という奇病が下総国一円に流行したときに、この悪病退治の祈願寺として建立された。境内から湧き出ていた清水(現存しない)と護符と茶目薬を室町時代から昭和中期まで出していたという。目薬の木というのがあり、その葉っぱをお茶葉にして飲んだというのを読んだことがあるので、茶目薬というのも目薬の木で作った薬なのであろう。木曽桧作りの仁王山門鐘楼(写真2)は平成4年完成の新しい山門であるが、立派な造りである。医王寺から高架の北総鉄道の下を潜り、大黒天を祀る宝生寺を訪ねる。住職に本尊のお参りを勧められ、本堂にあがって大黒天をお参りする。

 住宅街の道に迷いながら、福禄寿を祀る万福寺(写真3)に辿り着く。境内では、同じように七福神めぐりをしていると思しき親子3人が熱心にお参りしていた。
        

写真1 江戸川洪水ハザードマップ 写真2 医王寺 仁王山門鐘楼   写真3 万福寺



 
 万福寺から寅さん記念館に向かう道に出ると、急に人通りが多くなる。寅さん記念館は堤防を兼ねた柴又公園の地中部に建設された、とてもユニークな施設である。地中にあるためか、入口を入ると、寅さんがいる柴又にタイムスリップしたような感覚を覚える。しかも、入ってすぐのところに、撮影に用いられた「くるまや」のセットが配置されていて、完全に寅さんの世界に身も心も支配されてしまう。寅さんが持ち歩いた鞄とその中身の展示、タッチパネルによる寅さん映画の名場面の放映等、決して広い施設ではないが、楽しい展示で飽きることがない。
 寅さん記念館と道を隔てて、カメラ部品を製造していた地元の山本工場の創立者・山本栄之助の自宅を葛飾区が取得して一般公開している山本亭(写真4)に寄る。書院造と洋風建築の複合した和洋折衷の建物と純日本風の庭園が見事に調和した邸宅である。和室の鴨居は現代の日本人からすると低いが、天井はかなり高く、部屋全体としては広々とした空間を構成している。そんな和室で、5人別々にぜんざい、雑煮、抹茶を注文して一休みする。喧騒な現代の世相から隔離され、時間の流れがのんびりと過ぎていくような、何ともいえな雰囲気に包まれ、和やかな会話を楽しむ。

 山本亭を出ると、太陽も西に傾き出して少し寒くなってくる。渡し舟に乗船しようと、江戸川の土手から矢切の渡しに行くが、運悪く16時となり、、向こう岸に向かう船が最終運航といわれ、残念ながら乗船を諦める。

 夕暮れに追われるように、柴又帝釈天として親しまれている経栄山題経寺に向かう。明治29年(1896年)に建立された二天門(写真5)には、帝釈天の配下といわれる四天王のうち、増長天広目天が安置されている。残りの持国天多聞天帝釈堂内に本尊の帝釈天の脇士として配置されている。二天門を潜ると、正面に帝釈堂が配置され、拝殿の側面の壁上部には見事な浮き彫りの彫刻が施されている。帝釈堂には七福神の毘沙門天も祀られている。
 参道の両側に建ち並ぶみやげ物店は早くも店仕舞いの仕度を始めており、、慌しくみやげ物を物色する。参道を抜けて柴又駅前に出ると、寅さんの銅像(写真6)が帝釈天を振り返るように、斜に構えたポーズをとって立っている。
 陽もかなり落ちてきたため、残りの七福神めぐりは取りやめとして、出発点の京成高砂駅前の居酒屋に向かう。5時過ぎに飛び込んだため、一番客で広い席を用意してもらい、ビールで今年初めてのウォーキングの疲れを癒す。

写真4 山本亭  写真5 帝釈天二天門と参道 写真6 寅さん銅像





戻る


(C)2024 HIRAI. All Rights Reserved.